心臓移植実施検討全体会議が終了
2025.6.5
東京科学大学病院は、移植医療への積極的な取り組みを通じて社会に貢献するために、まず第1のステップとして、心臓移植の実施施設として認定されるために様々な取り組みを行っています。
「心臓移植実施検討WG(ワーキング・グループ)」は、2023年4月より準備、同10月に発足し、心臓血管外科、循環器内科をはじめ、集中治療部や看護部、事務部等、多部門から多職種のメンバーが集まり、定期的にワーキング・グループ会議を開催しています。現在は19診療科(部)、53名のメンバーとなっております。WGでは、心臓移植発生時の連絡体制や患者さんの診療体制の確認、日本臓器移植ネットワークとの連携、倫理的な適正などについて話し合い、シミュレーションやマニュアルの作成、移植医療部(外来)の新設、患者さんの受け入れなども実現させました。
そして2025年5月13日には、最後のWGが実施され、たくさんのメンバーが参加し、記念撮影をしました。約2年間、心臓移植実施施設として認定されるための準備を重ねてきたメンバーの充実した笑顔が印象的でした。
最後に、WGリーダーの東京科学大学病院心臓血管外科・藤田知之教授にお話を伺いました。
【質問】心臓移植実施WGの最初と最後の会議の雰囲気を比べて変化は?
藤田知之教授:本学では行なっていなかった治療にもかかわらず、多くのWGの方々にはじめから興味を持っていただきました。それでも話し合いを続ける中で、移植医療の大切さを感じていただき、積極的な発言が増え、自分たちの医療、東京科学大学の医療として捉えてくださるようになりました。それぞれが自分たちの役割を理解し、チームの一員として積極的に心臓移植医療に関わろうとしてくださっていることに感激しました。
【質問】リーダーとしてWGを牽引していく中で、苦労したこと、嬉しかったことは?
藤田知之教授:移植医療は高度な倫理観が求められます。また、施設基準や審査も厳しいため、すべてのセクションが完璧でなければいけません。他の固形臓器移植を行なっていない東京科学大学で、手術や麻酔、循環管理やICU管理のみならず、免疫抑制剤の管理、感染対策、リハビリ、病理検査、検体検査、メンタルケアなど一つ一つ確認し、プロセスを文章化し足りていないことを補っていく作業は苦労しました。嬉しかったことは、それらの地道な作業を通じて、WGのみんなが自分のことだと考えてくださるようになったことです。移植医療は究極の善意を具現化する医療です。その医療に賛同してくれたメンバーは優秀なだけでなく人として温かく、その輪に入れたことがとても良かったと感じました。
【質問】WGが生み出した成果について。
藤田知之教授:チームワークです。医療に携わるメンバーに加えて、事務の方たちが扇の要のような役割を担ってくださり、膨大な作業をスムーズに進めていただきました。幹部の方たちも非常に協力的で、東大との心臓移植における連携協定では藤井院長自ら東大に出向いてくださり締結してくださいました。移植WGは東京科学大学の一つのプロジェクトにすぎませんが、多くの人の「やってみよう」という積極性は東京科学大学の色々な分野でのさらなる発展を予感させます。
【質問】今後の当院の移植医療に関する抱負は?
藤田知之教授:心臓移植は寿命を迎えるしかなかった患者さんに希望を与える医療で、私たちは困っている多くの患者さんにこの治療を届けたいと考えています。また、心臓以外の臓器にも広がっていき、さまざまな臓器の移植が可能となる施設となれば良いな、と思っています。私たちの今回の経験を生かしていきたいです。
【質問】患者さんや社会に向けてのメッセージを!
藤田知之教授:移植医療は、ご自身が亡くなるとき、そして、最愛の家族が亡くなるときに臓器の提供を考えてくださってはじめて成り立つ医療です。ご家族は提供した臓器が、どこの誰を助けるのかを知ることはありません。それは、人に対する「無償の愛」とも言えると思います。私たちはチームの一員として、その臓器を提供くださるドナーとそのご家族の思いを受け止め、一生懸命目の前の患者さんを救います。この記事を読まれたことをきっかけに移植医療について考えていただけると嬉しいです。

藤田 知之 医師プロフィール
東京科学大学病院 心臓血管外科 教授
藤田 知之
-
専門医
⼼臓⾎管外科専⾨医修練指導者
日本外科学会指導医
⼼臓⾎管外科専⾨医
植込型補助人工⼼臓実施医
日本移植学会移植認定医
日本組織移植学会認定医
日本ロボット外科学会A 級ライセンス -
専門分野
冠動脈バイパス術
弁膜症手術
胸部⼤動脈手術
補助人工⼼臓手術